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得点が入り喜ぶ聖隷クリストファーの逢沢開生主将(中央)=2025年8月15日午後1時50分、阪神甲子園球場、滝沢貴大撮影
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 (15日、第107回全国高校野球選手権大会2回戦 聖隷クリストファー1―2西日本短大付)

 聖隷クリストファー(静岡)の逢沢開生(かいせい)選手(3年)は主将としてチームを牽引(けんいん)してきたが、左腕の手術で大会直前に登録メンバーから外れた。「自分がいまやれることを全力で」。15日の2回戦も左腕を三角巾でつるした状態で、アルプス席から仲間たちに声援を送った。

 長野県出身。同郷で聖隷へ進学した先輩から聞いた上村敏正監督(68)の真摯(しんし)な野球への姿勢にひかれ、進学した。昨夏に静岡大会の決勝で敗れた後、「主将をやらせてください」と監督に直訴した。選手としては、スタメンとベンチを行ったり来たりだったが、「ここ一番に強い打者」に成長して、背中でチームを引っ張りたいという思いからだった。

 実力をつけて今春からは外野の主力メンバーに。だが5月にあった東海大会のプレー中に左腕を骨折。静岡大会はメンバーに入れなかったが、練習中にボールを運んだり、打撃などで悩む仲間に助言をしたりして主将の役目を果たそうと努めた。

 チームは優勝を飾り、迎えた夏の甲子園。左腕も順調に回復し、いったん選手登録に名を連ねたが、その後の検査で、すぐに手術が必要と判明した。8月3日に抽選会でくじをひく大役を果たした後、5日に手術。登録から外れた。夢だった甲子園出場はかなわなかった。

 それでも心は折れなかった。「主将の自分がいつまでも悔しがっていたら仲間たちに失礼」。初戦の前日の8日には退院。チームに合流して静岡大会に引き続き、裏方としてチームを支えた。

 1回戦の明秀日立(茨城)戦で、チームは夏の甲子園初勝利。上村監督からはウィニングボールを手渡された。「メンバーのみんなが本当にいい顔をして試合をやっていた。自分がもらっていいのかという思いもあったが、本当にうれしかった」

 15日は西日本短大付(福岡)に1―2で惜敗。この日も逢沢選手に代わり、試合で主将を務めた渋谷海友(かいと)選手(3年)は「静岡大会も逢沢を甲子園に連れて行く、とチームが一丸となっていた。逢沢がここまで引っ張ってくれた」と話した。

 逢沢選手は試合後、笑顔で言った。「初の甲子園で1勝できて、主将として誇らしい。仲間たちにありがとうと言いたいです」

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