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国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長=2024年8月29日、西岡臣撮影
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 日本人初の国際刑事裁判所(ICC)の所長を務める赤根智子さんが、朝日新聞のインタビューに応じた。ロシアのプーチン大統領に逮捕状を出したことで、ロシア当局は赤根さんを指名手配。そしてイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出したことに反発した、トランプ米政権からはICCの裁判官に経済制裁が科されている。国際司法を担う立場から、いまの国際社会の「法の支配」の現状をどう見ているのか聞いた。

 ――ICCとはどのような国際機関ですか。

 「ICCが作られた経緯を振り返ると、(米ソ冷戦の)雪解けの時期、世界における刑事裁判というものを通じて、『法の支配』を確立しようと、活動を始めたのが2002年でした。『法の支配』という原則に従って淡々と活動するなかで、期待が増してくるにつれて扱う事件も増えましたが、同時に、様々な方向からICCがたたかれるようになってしまいました」

 「戦後、(連合国によってナチス・ドイツの戦争犯罪を裁く)ニュルンベルク裁判や、東京裁判によって、戦争の結末を刑事処罰という形でつけようとしたが、ある意味、勝者の側が事後に作ったルールで敗者の側を裁いたことで、いろいろ議論も呼んだ。『法の支配』といっても、国内と国際的な意味には違いがあるかもしれないが、国際的に恒久的な裁判所を作り、独立した裁判所として、法と事実に従って、中立・公正に裁くのがICCです」

 ――ICCの存在意義は何ですか。

 「国際法上、すべての戦争が犯罪になるわけではありません。ただ、ジェノサイド(集団殺害)や人道に対する罪など四つの中核犯罪を行う『個人』を刑事的に裁くことで、平和につながる一つの力になると思う。『法の支配』は概念的なものではあるけれども、理念に従って、それを実行する枠組みを作ったのだから、頑固と言われようとあくまでもそれを守り、裁判などを通じて、地道に事件を解決することにより、多くの人の信頼を得てやがてはみなが法に従うよう世界を変えていくことが使命です」

 ――国際社会において、「法の支配」はなぜ大事なのでしょうか。

 「自分が犯罪被害にあった時…

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