「100年をたどる旅~未来のための近現代史」日米編⑨
自由を突き詰めた末、社会や経済が痛めつけられ、その反動で自由そのものが危機に瀕(ひん)する。
およそ百年の時をはさみ、米国はそうした歴史を繰り返そうとしているかのようだ。
マンハッタンの河口からハドソン川沿いを120キロほど上流へ。米国史上で唯一、大統領に4度選ばれたフランクリン・D・ルーズベルト(FDR)を記念する図書館兼博物館が、ニューヨーク州ハイドパークの丘陵にたたずむ。
入館してすぐ「UNEMPLOYED」(失業)というネオン管の文字と、世界経済をどん底に陥れた大恐慌時の写真パネルが目に入る。
スープの配給に列をなす人々。
「なぜ僕の父さんには仕事がないの?」と書かれた板を手に立ち尽くす少年。
皆が恐怖に身をすくめる中、「ニューディール」(新規まき直し)を掲げて1933年に第32代大統領に就いたのが、民主党のFDRだった。
ダムなど大型公共事業による雇用創出がよく知られるが、それはニューディールの一部に過ぎない。
「大恐慌からの脱却を図っただけではない。二度と同じことが起きないよう、FDRは米国の資本主義を丸ごとつくりかえようとしたのだ」。ニューディール研究の第一人者であるカリフォルニア大デービス校のエリック・ローチウェー卓越教授(歴史学)はそう解説する。
銀行取り付け騒ぎが相次いだ金融危機への対応に、その精神がみられる。
もしニューディールが失敗していれば
FDRは就任早々、全米の銀…