Smiley face
写真・図版
避難所のレイアウトを作成する参加者=2025年6月28日午前10時8分、青森県むつ市、野田佑介撮影
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 災害が起きたら、あなたはどう行動しますか――。避難所の設営や地震の揺れの体験などを通して防災意識を高めてもらおうという催しが6月、青森県むつ市の県立大湊高校であった。同校の生徒が企画・運営した初めての取り組み。参加者約40人が実際に災害が起きたときの対応を学んだ。

 「まるっと一日防災Day」と題して行われた催しは、防災士会や地元消防などの協力を得て実施。同校が避難所になったと想定し、レイアウトを考えるところから始まった。体育館でテントや段ボールベッドの設営を体験した後、手動で地震のような揺れを起こせる器具を使って震度5~7程度の揺れを体感した。

 体育館から校舎3階の教室までの避難訓練も体験。障がいのある人や日本語での意思疎通が難しい外国人、けがをした人などがいる設定で、肩を貸したり避難ルートを英語で説明したりしながら避難場所まで誘導した。途中には、あえて暗くして足元がわかりづらい、人工的に煙を充満させることで視界が奪われるといった場所を作り、夜間や火災発生時の避難の困難さも体感した。

 高校生が調理した非常用のアルファ化米やハンバーグ、筑前煮といったレトルトの防災食の試食会に加え、カードゲームで防災に関する知識を学ぶ時間もあった。

 八戸市から参加した主婦の岩舘桂子さんは「体験することで防災を意識するきっかけになる。こうした機会をつくってもらえてありがたいし、この取り組みが当たり前のようにいろんな地域に広まっていけばいい」と話した。

     ◇

 「見るだけ、聞くだけじゃなくて、体験することで防災への意識を高めてほしいんです」。青森県立大湊高校3年の澤谷美雨さん(18)は、そんな思いで今回の催し「まるっと一日防災Day」を企画した。

 澤谷さん自身、高校に入るまで防災や災害の問題に強い興味を持っていたわけではなかった。だが、高校1年の冬に「興味本位で」見た1本の映画が防災への関心を一気に高めた。2011年3月の東日本大震災を経験した宮城県の男性の著書に着想を得て撮られた映画「有り、触れた、未来」だ。

 震災が起きた当時はまだ幼かった澤谷さんだが、この映画と男性の話を通して命の尊さを実感し、「命を守る防災のことを本気で学ぶべきだと思った」。

 学校のある下北地域で防災活動に取り組む高校生の団体「下北BOUSAIネットワーク」のメンバーとして、津波で甚大な被害が出た岩手県宮古市や宮城県石巻市の被災地を訪れ、現地の人から震災当時の話を聞いた。昨年末には、大きな地震が襲った台湾にも研修で足を運び、避難所の設備を見学したり運営の考え方などを学んだりした。

 その経験が、今回の体験型の催しを企画するきっかけになった。「避難所で実際に使うテントや段ボールベッドなどを使ったことがない。みんなが使い方を知っていれば協力できるのに」。同校で防災教育に取り組む教員の南澤英夫さん(64)に思いを打ち明けると、「いざというときのために知っておくだけでも違う」と開催へ背中を押してもらった。

 下北BOUSAIネットワークで活動をともにする同級生や後輩たちも、澤谷さんの思いに共感して準備や当日の運営のサポートをしてくれた。

 「もう少し学べる要素を入れた方がよかったかな」。反省を口にしつつ、「災害が起きたときのことを自分で考えながら体験してもらえてよかった。今回経験してもらったことは実際の場面でも生きるはず。参加してくれた人が周りの人にも伝えてくれたら、防災意識はどんどん広がっていく」と力を込めた。卒業後は大学で本格的に防災を学びたいと考えている。

共有