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写真・図版
東京都台東区・吉原(千束=大門口を入った引手茶屋)=1929年7月撮影

 近年、江戸時代の「吉原」に代表される遊廓(ゆうかく)(遊郭)文化への関心が高い。テレビドラマやアニメ、漫画、展覧会などを通して「先進的な文化の発信地」という印象が流布している。だが、日本近世史の専門家は「性の尊厳」が軽視される傾向に警鐘を鳴らす。

 NHK大河ドラマ「べらぼう」は吉原遊廓(遊郭)が重要な舞台だ。昨年の「大吉原展」(東京芸術大学大学美術館)でもゆかりの美術品が展示された。

 国立歴史民俗博物館名誉教授で日本近世史・ジェンダー史が専門の横山百合子さんは「吉原に代表される遊廓文化への関心が近年高まっている」と話し、ある懸念を抱く。「吉原を文化で語ることで、性売買の場であった歴史的実態を見誤り、性の尊厳という現代の課題を見失わせるのではないか」という懸念だ。

月1回の「論壇時評」掲載に向けて、論壇委員が推薦した論考を1本選んで、詳しく紹介します。今回は横山百合子さん「吉原と日本人」(世界8月号)を取り上げました。

 吉原は、戦国の世を生き抜い…

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