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 南アフリカの最大都市ヨハネスブルクにある貧困地区ソウェト。HIV(エイズウイルス)に母子感染した子どもに通院費用などを支援するNGO「イカヘン」の施設から今年5月、子どもたちの姿が消えた。

 「米国の援助が途切れて活動を停止するしかなかった。命をつなぐ薬を手に入れられなくなった子どもの気持ちがわかりますか」。調整担当ロレイン・シベコさん(46)はため息をついた。

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HIV(エイズウイルス)に感染した子どもらを支援するNGO「イカヘン」幹部のロレイン・シベコさん=2025年8月13日、ヨハネスブルク、今泉奏撮影

 国連によると、南アには世界最多の約780万人のHIV感染者がいる。感染者が多く、自国だけで治療や感染対策の費用をまかなえない。ロイター通信によると、HIV関連予算の約2割を米国に頼ってきた。

 だが、トランプ大統領の今年1月の復権後、米国は米国際開発局(USAID)の支援の一時停止を進めてきた。南アでは、HIVの高度な研究から草の根の支援まで、相次いで資金難に陥った。

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HIV(エイズウイルス)に感染した子どもらを支援するNGO「イカヘン」の施設で、米国からの援助を証明するプレート=2025年8月13日、ヨハネスブルク、今泉奏撮影

 活動資金の8割をUSAIDがまかなっていたイカヘンは活動を断念した。職員72人の給与は6~8割がカットされ、子どもたちへの支援は、ほぼ全て途絶えた。病院にさえ行けば、薬を受け取れる。だが、300人以上のHIVに感染する子どものうち、約100人が、援助に頼ってきた通院費用を工面できなくなった。

 シベコさんは「絶望で自殺未遂をした子どももいる。ウガンダやルワンダのNGOも悲鳴を上げている。米国はアフリカを見捨てないと思っていたのに、裏切られた気持ちだ」と憤る。

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 「米国不在」の影響は、アフリカ各地に広がる。東アフリカで周辺国などから80万人以上の難民らを受け入れているケニアも、大きな影響を受ける国の一つだ。

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