1979年10月の朴正熙(パクチョンヒ)大統領暗殺事件や軍内部の権力闘争などを描いた韓国映画「大統領暗殺裁判 16日間の真実」(2024年)が8月22日から新宿武蔵野館など全国で公開される。昨年12月に韓国で起きた非常戒厳の宣布をめぐる騒動と結びつけて語られた話題作だ。
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大統領を暗殺した中央情報部長の秘書官だったパク・テジュ大佐(イ・ソンギュン)、大佐を助けようとするチョン・インフ弁護士(チョ・ジョンソク)、全斗煥(チョンドゥファン)元大統領がモデルで権力の中枢から裁判を裏で操るチョン・サンドゥ少将(ユ・ジェミョン)の3人を中心に描かれる。
命令に服することを最優先して軍人としての正義を貫こうとする大佐に対し、裁判で有利になる証言をさせようと必死になる弁護士が「あなたの名前を記憶する人などいない」と迫る場面がある。チュ・チャンミン監督は「歴史の中で忘れ去られた人々に光を当てたかった」と語る。
23年12月に死去したイ・ソンギュンは本作が遺作になった。チュ監督は、イ・ソンギュンの演技について「拘束されているという設定で動きが少ない難しい状況のなか、言葉だけでなく、表情で巧みな演技をし、大佐の人物像を幅広く伝えてくれた」と高く評価する。
単純な勧善懲悪のストーリーではない。軍内部でも少将と対立する人物を描いた。民主化闘争としての意義を見いだそうとする弁護団のなかで、主人公の弁護士は主義主張よりも、大佐を救うためだけに奔走する。
戦争における人間性を描いた小説「人間の條件」(五味川純平)が好きだというチュ監督は「ヒューマニズムこそ、生きていくうえで一番重要な価値なのだ」と訴える。
韓国では本作が公開された後…