転勤がある大企業の約4割で、転勤や配転を理由にした退職、いわゆる「転勤離職者」が出ているものの、大企業の半数超が、手当や選択制といった「転勤対策」を講じていない実態が、東京商工リサーチの調査で浮かび上がった。
東京商工リサーチが8月初旬、6691社を対象に調査したところ、転勤制度があると回答したのは2428社(資本金1億円以上の大企業457社、同1億円未満の中小企業1971社)だった。
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転勤がある企業に対し、転勤や配転、転籍を理由にした退職が直近3年であったかどうか尋ねたところ、全体の30%が「あった」と回答。大企業の方がより深刻で、正社員・非正社員合わせて38%になった。
社員が転勤の可否を選べる選択制、転勤手当、エリアを限定して採用する制度のような転勤対策の制度を導入しているかを尋ねたところ、大企業の31%がすでに制度を「導入している」、11%は「検討中」と回答した。56%は「導入する予定はない」とした。中小企業では「予定はない」が78%に達した。
外資系金融大手のAIG損害保険(東京)をはじめ、あいおいニッセイ同和損害保険、流通大手のニトリホールディングス、三井物産などは社員が転勤の可否を選択できる制度や転勤する社員には手当を手厚くする制度をすでに導入している。
2023年10月に選択制を導入したあいおい損保人事部企画グループ長の竹田雅彦さんは「育児、介護などライフイベントに沿って社員が転勤の可否を選べるようにし、望まない退職を抑止したい」と語る。
一方で調査を担当した東京商工リサーチ情報本部の本間浩介さんは「近年の転職市場の活性化で転勤・配転命令による離職者が増加する中、企業の対策は思ったより遅れている印象だ」と分析する。