京都大学の研究チームは、ヒトのiPS細胞から胸腺上皮細胞をつくることに成功した。さらにこの細胞が未知の病原体などを認識して攻撃する免疫細胞の一つ、ナイーブT細胞になれることも確認した。先天性の重度の免疫不全の病気の治療や、がんの治療に役立つという。
胸腺は心臓の近くにある臓器で、病原体を認識するための抗体産生を助けるヘルパーT細胞や、ウイルスに感染した細胞やがん細胞をやっつけるキラーT細胞をつくる。7~8歳ぐらいをピークに次第に小さくなり、高齢になると機能が低下する。
胸腺の機能が低下すると、未知のウイルスなどに対応できなかったり、がんの免疫治療を続けるうちにがん細胞に変異が起きて効果がなくなったりする場合がある。そこでチームはどんな場合にも対応できるナイーブT細胞のもとになる胸腺上皮細胞をiPS細胞から作ろうと考えた。
チームはiPS細胞にレチノイン酸を加えることで、試験管内で胸腺上皮細胞を作ることに成功。さらに、胸腺上皮細胞にT細胞のもとになる細胞を加えることで、胸腺上皮細胞がナイーブT細胞に分化することを確認した。
今後は生まれつき胸腺がない…