Smiley face

 首に傷痕が残る。おなかにも。

 尾野一矢さん(52)。

 9年前の2016年7月26日、障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市)で入居者19人が刺殺され、職員3人を含む27人が負傷した。

 その被害者の一人だ。

 その後施設を出て、現在は、神奈川県座間市のアパートで暮らす。

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自宅でくつろぐ尾野一矢さん(左)。インタビューに答える介助者の大坪寧樹さん(右)の隣で、にこやかに取材に応じた=神奈川県座間市

「おなか、いたい」今でも

 凶行に及んだのは、施設の元職員の男だった。障害のある人の安心・安全な暮らしを守るはずの入所施設で起きた大量殺人。「障害者は不幸を作ることしかできない」といった身勝手な考えがあったとされる。

 「やまゆり園事件」の衝撃と不安は海外にも広がった。

 知的障害と自閉症がある一矢さんは、言葉が多くはなく、事件について詳細を語ることはない。

 しかし、今でも、「おなか、痛い」と訴えることがある。「事件を思い出すのかもしれません。おなかの傷を、私に見せようとしないんです」。母チキ子さん(83)は言う。

 一矢さんに長く寄り添ってきた介助者の大坪寧樹さん(57)も、一矢さんの表情や体調から、「事件と無関係とは思えない。心の傷は深いと思う」と推し量る。

 あの日、一矢さんに何があったのか。

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