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【ニュートンから】人体と機械は融合できるか(1)

写真・図版
人体と機械の融合

 未来の人類は本来の腕とは別に,新しい機械の腕を装着しているかもしれない。近年,機械やAI(人工知能)と人体を融合させて,人間の身体機能を拡張させる「人間拡張工学」の研究が進んでいる。難病を患いながらも人間らしく幸福に生きるためにサイボーグになることを決断した科学者のピーター・スコット-モーガン氏はその先駆けだ。人体と機械の融合はどこまで進んでいるのか。人間拡張工学の最前線にいる研究者に話を伺った。

《私たちが目指すのは“人間である”ことの定義を書き換えることだ。》(『ネオ・ヒューマン 究極の自由を得る未来』101ページより引用)

 ロボット工学の博士号をもつピーター・スコット-モーガン氏(1958~2022)は,難病を患ったことをきっかけに,“サイボーグ”になることを決断した。上の言葉は,彼が自身の難病と闘うために,自分自身をAI(人工知能)と融合させることを決意したときの言葉だ。

 スコット-モーガン氏は,2017年に体の運動機能がしだいに失われる難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と診断された。ALSの根本的な治療法はまだ確立されておらず,ALSが進行すると,食べ物やつばを飲みこんだり,話したり,呼吸したりすることも苦しくなる。一方,ALS患者の思考する力は維持される。そのため,ALS患者は,動かない自分の身体にしだいに閉じこめられていくような絶望感におそわれるといわれる。

「幸福に人間らしく生きるために」

 しかし,スコット-モーガン…

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