「時をよむ」 論説委員室から
「核兵器は、絶対に人類と共存できない」
米軍による原爆投下から80年となった今年の夏。広島・長崎など各地で平和式典や記者会見、国際会議、シンポジウムなどを取材し、惨禍を生き延びた被爆者たちの訴えを、改めて胸に刻むことになった。
今や被爆者の平均年齢は86歳を超える一方、人数は10万人を下回った。切実な願いが「核兵器のない世界」の実現。世界の多くの市民にとっても同様だろう。
2009年に米国のオバマ大統領が「核なき世界」の実現を訴え、17年には国連で核兵器の開発や保有、使用、使用の脅しなどを全面的に禁じる核兵器禁止条約が採択された。世界は核軍縮への道を、着実に歩んできたのか。
そうではない。現状は対極に…