人口がピークの3分の1近くまで減った市がある。「消滅可能性自治体」にも挙げられる佐賀県多久市。かつて炭鉱があって栄えた街だ。いまの様子を記者が山あいと街中で見聞きした。
黄金色に色づいてきた稲が育つ田んぼが、斜面に階段状に続く。多久市西部、標高190メートルほどの山あいにある「平野の棚田」。米はブランド化されている。
生産者の一人で、ひらの棚田米振興協議会会長の小園敏則さん(78)は「昼夜の温度差があるから、うまみが出る」と語る。
平野地区出身で、市内の他地域で暮らしているが、定年退職後、地元に通い本格的に米作りに取り組む。
「集落がなくなる」危機感
いまは棚田の美しい景色を維持している。ただ、平地の稲作より手間はかかり、細い道での農業機械の移動などは危険も伴う。収量は上がらず、「後の人に任せるとは言い切らん」。生産者は8人。後継者不足が課題だ。
平野地区の住民は11世帯2…