日本一の清流・五ケ瀬川を縫うように走り、絶景路線として名高かった旧高千穂鉄道(TR、延岡―高千穂、約50キロ)。同線を廃線に追いやった台風の襲来から6日で20年が経つ。復活を期す有志は「高千穂あまてらす鉄道」(あま鉄)を立ち上げ、廃線跡を観光鉄道化し、未来に希望をつないだ。数々の困難を乗り越え、きょうも観光客を喜ばせている。
今月3日。高千穂町のあま鉄・高千穂駅は人でごった返していた。ホームや駅舎に、いくつもの国の言葉が飛び交う。同社専務の斉藤拓由(ひろよし)さん(50)は人混みの中、笑顔で乗客を案内し、記念撮影のシャッターを押していた。
TRの、生え抜きの運転士だった。鉄道に憧れ1995年に入社、約10年間、列車を操り続けた。TRは沿線住民の大切な足で、観光客にも人気が高かった。「車内は一つの公民館のようだった」。客とのふれあいも濃密。降りるお年寄りによく、お菓子を渡された。
穏やかな日々は2005年9月6日、断ち切られた。台風14号で、五ケ瀬川に架かるTRの鉄橋2カ所が崩落した。斉藤さんや沿線住民は存続運動を繰り広げたが実らず、08年末に全線廃線となった。
だが、この運動に関わった同…