部下の査定や人事は、上司の権力の象徴でした。しかし、上司との折り合いの悪さを理由にした離職も後を絶たず、むしろ部下が上司を選ぶ制度を採り入れる企業も出てきています。その効果や副作用をどう見ればいいのか。企業・組織の人材、組織開発について研究している立教大学経営学部の中原淳教授に聞きました。
――上司の当たり外れで将来のキャリアまで左右されてしまう「上司ガチャ」を理由に辞めてしまう若手も増えています。
若手を潰す管理職は一定数いる
どの組織でも、若手を潰してしまう管理職は一定数います。多いのは「よかれ」と思って行う指導が行き過ぎるケースです。そうしたリスクのある管理職の下には若手を配属しないなど人事マネジメントはきちんとすべきで、若手への指導法なども管理職に教える必要があります。
――部下が上司を選ぶ制度を採り入れる企業も出てきています。
- 部下が上司を選ぶ制度が続々 「上司ガチャ」「好き嫌い人事」防止
そもそも管理職の定義は「他者を通じて、事をなすこと」。言い換えれば、部下の能力を伸ばし、チームをつくって成果を出すことなんです。ただ、能力は高くても部下の育成やチームを作ることに関心がない管理職はどの組織にもいます。部下が上司を選ぶ制度は、「部下に上司を選ばせる」という手段で、そういう問題のある管理職を「見える化」することに寄与すると思います。
――見える化ですか?
部下が上司を選挙で選んだり、部下が上司を逆指名したりするのですから、どんな理由があるにせよ「選ばれない管理職」が出てきます。部下の指導やチーム作りに尽力しない管理職をあぶりだすシステムとしては有効だと思います。しかし、組織にとって副作用を伴う「劇薬」とも思います。
――副作用を伴う劇薬とは?
部下が上司を選ぶようになれば「上司ガチャ」の弊害は減るかもしれません。一方で中原教授はこのやり方を「劇薬」とも言います。その理由とは?
部下に上司を選ばせることで…