軽油の販売価格をめぐってカルテルを結んだ疑いで、公正取引委員会が10日、石油元売り最大手ENEOS系などの石油販売会社8社を家宅捜索した。不安定な世界情勢での原油高が続くなかで浮上した価格調整の疑い。直接影響を受ける運送業者からは不信の声が上がる。
- 軽油販売で価格カルテル容疑、公取委が8社を捜索 価格高騰の中で
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10日朝、東京都大田区の海沿いのガソリンスタンドでは、大型トラックが次々と入っていった。運送業者を中心とする法人向けの給油所で、周辺の道路には大型車がずらりと並ぶ。
公取委は、「フリート販売」と呼ばれるこうしたガソリンスタンドで供給される軽油をめぐって価格調整が行われていたとみている。
軽油10円↑で負担も200万円↑
東京都江戸川区の運送業者は、中型トラック8台を持つ。1カ月あたりの合計の走行距離は、平均1万キロで、軽油を約2千リットル消費する。軽油価格が10円上がれば、年間で約200万円の負担増になる計算だ。
今年9月1日時点の軽油価格は1リットルあたり約154円。5年前より約40円高く、経営を圧迫し続けている。同社の担当者は「販売管理費を削減せざるを得ない状況になっている」。石油販売大手にカルテル容疑が向けられていることについて、「本当なら許されない」と憤る。
全日本トラック協会(東京)によると、営業コストに占める燃料(軽油)費の割合は増加傾向で、2023年度は約14%だった。協会は、「燃料価格が1円上がるとトラック業界全体で約150億円負担が増える」という危機感から、燃料価格の上昇分を上乗せして荷主側に請求する「燃料サーチャージ」制度への理解を求めている。
コスト増加分は運送業者か、荷主か、消費者か、誰かが負担を負うことになる。燃料サーチャージ制度によって荷主への価格転嫁が進めば、運送業者の負担は減るが、最終的に消費者へしわ寄せが行く可能性がある。
ハードル高い価格転嫁
運送業者にとって価格転嫁はハードルが高い。
東京都中央区の運送業者は取材に、「取引先の2~3割が燃料サーチャージ制度の導入に応じていない」と言う。社長によると、ドライバー不足で「売り手市場」となり、同制度に理解を示す荷主は増えているが、「運送業者は難しい立場に置かれている」と言う。他社との価格競争に負ければ、荷主から契約を切られる立場だからだ。
価格交渉できずコスト増を受け入れざるを得ない業者は少なくないといい、「軽油価格が1円上昇するだけで影響が出る」と話す。社長は「もしカルテルが結ばれているなら、見えないところで運送業の経営に多大な影響を与えている」と言う。
延長を繰り返す「時限」措置
軽油の価格は高止まりしてい…