日本有数のクラシック音楽専用ホールとして知られるザ・シンフォニーホール(大阪市北区)が、音楽を通した日韓交流に力を入れている。1年前に大邱(テグ)にあるコンサートホールと連携協定を結び、今年3月には演奏団が訪韓した。今月25日には大阪で大邱市立交響楽団が特別公演する。
韓国南東部の中心都市の大邱は、国内外の演奏家を招いた音楽祭の開催に力を入れ、「ユネスコ音楽創造都市」に選ばれている。その拠点である「大邱コンサートハウス」の運営者から2年前、ザ・シンフォニーホールに視察依頼が届いた。日本初のクラシックコンサート専用ホールとして開館(1982年)以来蓄積された運営技術やアイデアなどを学びたいと来訪した。その後も視察を受け入れた。
ザ・シンフォニーホールからは昨年5月、取締役ゼネラルマネジャーで音楽総監督の喜多弘悦(ひろよし)さん(58)が大邱コンサートハウスを訪問した。「近代的で斬新な建物ですが、中に入るといい雰囲気のホールでした」。音楽ホールを演奏空間にとどめず、文化交流や人材育成の拠点として成長させたい。現地の関係者と話を交わすうち、互いに目指す方向で意気投合した。
昨年9月、両ホールは大阪で「連携協定」を締結した。「アーティストの出演や演奏プログラムの協力」「施設運営など人材の交流プログラムの実施」「技術やアイデアの共有」が柱で、海外のホールとこうした連携協定を結ぶのは初めてだ。
日韓国交正常化60年の今年、具体的な取り組みが始まった。今年3月、大邱コンサートハウスで開かれた「国際アンサンブルフェスティバル」に、ザ・シンフォニーホール側から演奏家13人が招待され、喜多さんが指揮した。朝鮮半島の代表的民謡と日本の童謡を吹奏楽曲に編曲した「アリランと赤とんぼ」などを演奏し、立ち上がった聴衆から拍手を受けた。
協定締結から1年となる今月25日には大邱コンサートハウスを拠点とする大邱市立交響楽団がザ・シンフォニーホールで公演する。楽団音楽監督のジン・ベク氏が指揮し、人気ピアニストの金子三勇士(みゆじ)氏も出演する。
11月には約50人の演奏家が大阪から大邱に招待され、喜多さんの指揮で演奏する。
日本ではK―POP、韓国ではJ―POPが人気を集めている。「入り口がポップスであれ、クラシックであれ何であれ、互いに仲のよい隣人をつくることが大切」と話す喜多さんは音楽を通した日韓連携の裾野を広げ、人材育成の礎にしたいと考えている。
「次世代の若い演奏家にとっては国境を越えて舞台に立つことが大切なキャリアになる。日韓の若い演奏家が舞台で素晴らしい景色を見てもらえるようにしたい」
大邱市立交響楽団の25日の公演は午後7時から。問い合わせはザ・シンフォニーチケットセンター(06・6453・2333)。22日午後7時からはアクロス福岡シンフォニーホール(福岡市中央区)でも公演がある。問い合わせはCARAVAN(092・732・8858)。いずれの公演も全席指定でS6600円、A5500円、B4400円(税込み)。