かつて「庶民の町」だった東京の湾岸部には、タワーマンションが立ち並んでいます。東京の中心部に「庶民の町」は残るのでしょうか。近現代日本の都市社会の変遷を研究してきた社会学者の武田尚子さんに聞きました。
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東京の中央区月島、渋谷区の幡ケ谷・本町地域など、「庶民の町」の特性を歴史的な視点から掘り起こす研究を続けています。
庶民の町は住・工・商の混住が特徴でした。画一的な住宅地ではなく、工場労働者や商業を営む自営業者が混ざり合って暮らしていました。近代の都市化で形成されたこうした町では、郊外化の時期に工場が移転し、工場労働者層は減少していきました。その後、都心再開発が始まり、東京では1980年代に「再都市化」が本格化しました。
東京湾岸の月島では、70年…