田んぼが黄金色に色づき、収穫シーズンを迎えた北東北で、農家に支払われるJAの概算金(60キロ、1等米)が高騰している。青森、岩手両県の主要銘柄はいずれも3万円台となり、過去最高となった。過熱する業者間の集荷競争などが概算金を押し上げた。概算金の高騰は新米の店頭価格に影響しそうだ。
概算金は、農家がJAにコメを委託して販売する際に受け取る前払い金のことで、流通価格の指標になる。JA全農あおもりは9日、8月19日に決めた概算金相当額を一律4千円引き上げると発表した。主要銘柄の「はれわたり」と「まっしぐら」はいずれも3万円、「青天の霹靂(へきれき)」の買い取り価格は3万4千円程度。3銘柄とも2024年産のほぼ倍増となった。
JA全農いわては9月に入り、8月下旬にいったん決めた25年産の概算金について、主食用米の全ての銘柄について一律3千円引き上げると決めた。主要銘柄の「ひとめぼれ」は3万1千円、「あきたこまち」は3万500円、「銀河のしずく」は3万1500円で、いずれも24年産より1万2千円高い。
概算金高騰の背景には、7、8月に高温少雨だった影響で収穫量が減少し、供給量が少なくなることへの懸念がある。民間の業者が、JA概算金より高い買い取り価格を農家に示す動きも影響した。
農林水産省の25年産収量見込み(8月15日現在)で、青森県は「前年並み」。岩手県は「やや下回る」(前年比98~95%)の予想だった。「やや下回る」は岩手、秋田、宮城、千葉の4県だけだった。
JA全農いわての阿部貴明・米穀部長は「概算金と業者の示す買い取り価格に大きな開きが出ていて、コメを集めるためにも早い段階で価格を引き上げる必要があった。安定供給できるように努めたい」と話した。
JA全農あきたは、昨年まで概算金の金額を公表していたが、「過度な価格競争につながる恐れがある」とし、今年は非公表の方針を決めている。
青森、岩手県の2024、2025年産JA概算金
銘柄 24年産 25年産
まっしぐら(青森) 15000 30000
はれわたり(青森) 15000 30000
青天の霹靂(青森) 17100程度 34000程度
ひとめぼれ(岩手) 19000 31000
あきたこまち(岩手)18500 30500
銀河のしずく(岩手)19500 31500
※1等米60キロあたり、単位は円。青天の霹靂は買い取り価格