つややかな白い陶片の中に交ざる渋い灰黒色と、それらを結ぶ漆黒のつなぎ目。ひと目見たら忘れられないプレートは、割れた九谷焼や珠洲焼を輪島塗の技術でつなぎあわせてつくられた。企画したのは石川県能美市の会社「CACL(カクル)」。代表の奥山純一さん(41)は「規格外」にこだわってきたという。
九谷焼の陶片などを使ってつくられたプレートは、フランスの高級ファッションブランド・ジバンシイの系列で、香水や化粧品を手掛ける会社「パルファム ジバンシイ」の高級ラインの香水とセットで数量限定で販売される。「九谷焼と珠洲焼という本来、出会うことのなかったかけらを、能登半島地震で地元の工房を離れざるをえなかった輪島塗の職人がつないだ。誰かが決めた『規格』の外に存在するものから生まれました」と奥山さんは言う。
岐阜県大垣市出身の奥山さんは外資系人材総合サービス会社を経て、金沢市で障害があったり生きづらさを感じたりする人たちの就労支援をする会社「ヴィスト」を設立。石川、富山、神奈川県に20の拠点をつくるまでに成長させた。
次第に、石川県南部で盛んな九谷焼のような伝統工芸の人手不足や事業継承の問題と、就労支援が必要な人たちの働く場の確保を結びつけられないかと考えるようになり、2023年6月、伝統工芸と福祉を融合させる新たな会社CACLをつくった。
CACLではまず、白磁の皿に九谷焼の絵付けのシートを貼る仕事を始めた。就労継続支援事業として、障害のある人たちが取り組んだ。
「規格外」を決めるのは
奥山さんはこの仕事を通じて、制作工程でひびが入ったり規格外とされたりして、廃棄される陶片が大量にあることを知る。「割れて捨てられていくものを目にして、電撃が走るというか、うわぁっとなりました。母親の様子とオーバーラップしたんです」
奥山さんが高校生のとき、母…