東京オペラシティアートギャラリー蔵 撮影:若林亮二
難波田(なんばた)作品に特徴的な垂直の線ももはや消え、青のモノクロームの濃淡だけがモヤモヤと漂う。細い筆で点を置いていくように丹念に描かれた筆跡は、密集し拡散する無数の粒子のようだ。
「大きな筆で機械的に塗ったのとは違い、気の遠くなるような行為の集積に、人間の息づかいや念がこもっている」と、東京オペラシティアートギャラリーの福士理シニア・キュレーターは言う。
この「粒子」感は、若き日の難波田龍起(たつおき)が薫陶を受けた高村光太郎に由来する。詩人で彫刻家の高村は、絵画は視覚だけでなく触覚との結びつきが肝要だと語った。それは画面を触って感じられる画材の質感とは異なり、あくまでイメージとしてたちのぼってくるマチエール(絵肌)だ。
縦1.6メートル、横3.9メートルという大作。記事の後半では、88歳の難波田がモネの絵のどこに触発されてこの作品を描いたのに迫ります。
高村はもう一つ、芸術には「…