ワーホルム、北欧密着ルポ 第2回
ノルウェーに世界記録保持者を育てた名伯楽がいる。
レイフ・オラフ・アルネスさん(68)。
2021年東京オリンピック(五輪)男子400メートル障害で45秒94の世界記録を出した、カルステン・ワーホルム(29)を10年間指導してきた。
出会った当時は無名のワーホルムをどう育てたのか。東京五輪での衝撃の記録は、なぜ生まれたのか。
独特な指導方法や哲学を聞いた。
――ワーホルムを指導し始めたきっかけは。
「2015年にノルウェーの陸上関係者から紹介されました。カルステンは私に『週に2回ぐらい練習を見てほしい』と言ってきた。でも私は、『それなら他の人がやるべきだ』と言いました。毎日教えないと意味がないから」
――なぜ教えることに。
「彼は10種競技の選手でした。翌年のリオデジャネイロ五輪に出たいと言うので、『最短の道は400メートル障害だ』と言いました。400メートルを46秒台で走れて、大きな歩幅で走れる。ハードルも跳べたからです」
――当時の自己記録は51秒台でした。
「私は、48秒50で走れると伝えました。彼は『49秒50の間違い?』と聞き返してきた。現実的ではないと思ったのでしょう。『それは、競技人生でいつか達成できる目標か』とも聞かれたので、『来年だ』と答えました」
「彼は『あなたは変人。クレージーだ』と笑っていた。私は『条件は一つ。私を信じて欲しい』とだけ伝えました」
特異なレースパターン
――自信があった…