Smiley face

 北欧の福祉国家が曲がり角を迎えている。ロシアのウクライナ侵攻を受けて防衛費が膨らみ、高齢化も財政を圧迫する中、福祉の見直しが進む。移民や難民の流入も相まって、すべての人が平等にサービスを受けられる「普遍主義(ユニバーサリズム)」のあり方が改めて問われている。

 ヘルシンキ中心部で9月初め、キリスト教系慈善団体「救世軍」が平日に賞味期限切れに近い食料品やパンを配る事務所の前に、数十人の長蛇の列ができていた。所長のキルシ・フルデンさん(56)は「ここ数年、並ぶ人が増えた。避難してきたウクライナの人々に加え、フィンランド政府の財政緊縮策で生活が苦しくなった人が目立つ」と話す。

 2023年に交代した現政権は財政緊縮策に乗りだし、財政健全化を重視する連立与党の右翼「フィンランド人党(フィン党)」のプッラ財務相が社会保障分野の見直しに大なたを振るっている。

 列に並んでいた旧ユーゴスラビア出身のミリンコビッチ・ドラガナさん(35)は8月下旬、不定期で舞い込んでくる通訳のアルバイトをやめた。美容系の仕事を目指して資格の勉強をしているが、緊縮策で臨時収入があると失業手当が削減されるためだ。だが、臨時収入がなくなったことで生活が苦しくなり、「食料を買う余裕はない」と話す。

写真・図版
ヘルシンキで2025年9月3日、食料配布の列に並ぶミリンコビッチ・ドラガナさん。政府の財政緊縮策を批判した=寺西和男撮影

 福祉見直しにより幅広い影響が出ている。フィンランドはホームレス支援に熱心なことで知られ、公的補助で低所得者向け住宅を増やすなどの取り組みを進めてきた。前政権下では、27年までの「ホームレスゼロ」目標も掲げた。しかし、住宅手当の削減などで住居を追いだされる人もおり、昨年の単身のホームレスは3806人と前年より406人増えた。増加はユーロ危機があった12年以来、12年ぶりだ。

 国際NGOアムネスティ・インターナショナルのマリコ・サトウさんは「緊縮策は人権問題を招いている。政府は人権を守るべきだ」と訴える。

緊縮策、貧困層に打撃大きく

 政府が緊縮策を進めるのは…

Share.