義母が息を引き取った。
2003年1月9日。荒木由美子にとって、それは悲しい出来事ではあったが、同時に、20年にわたる「介護」という重責からの解放でもあった。
荒木は、1976年の第1回ホリプロタレントスカウトキャラバンで見いだされ、翌年に歌手デビューした。数年後には売れっ子タレントとして絶頂期を迎えたが、83年、13歳年上の歌手、湯原昌幸との結婚を区切りに、芸能界を引退した。
義母が体調を崩したのは新婚生活スタートとほぼ同時。しばらくして認知症の症状も現れ、荒木は介護のストレスで円形脱毛症になった。結婚1年後に生まれた息子の育児をしながら「20年間、走り続けた」
ようやく手に入れた自由だった。けれど、心にぽっかり穴が開いていた。「燃え尽き症候群ですよね。人から食事に誘われても断るほど、外に出る力もわきませんでしたから」
義母の死から1カ月後。そんな荒木の前に、1人の人物が現れた。
中国ネット通販大手「アリババ集団」の創業者、ジャック・マーだ。夫が所属する芸能事務所を通じて、荒木との面会を希望していた。
社内に設けられた「逆立ち部屋」
03年2月18日、帝国ホテ…