旧ジャニーズ事務所(現SMILE―UP.〈スマイルアップ〉)の創業者である故ジャニー喜多川氏による性加害問題が、社会問題になって約1年。男の子の性被害があることを社会が広く認識するようになりましたが、性暴力の防止や予防に社会は本気で動き出しているのでしょうか。子どもの虐待問題や性暴力被害に詳しい小児精神科医の奥山真紀子さんに聞きました。
性被害を受けないこと、その教育は「心身の権利」
性暴力を防ぐための取り組みは、いまだ後手後手になっていると感じます。
ジャニーズ問題を受けて、内閣府は昨年、男児や男性の性被害相談窓口を開設するなどしました。一歩前進ですが、男の子の性被害にとどまらず、もっと広く性暴力に対処し、ケアや治療も受けやすくしなくてはなりません。
こども家庭庁ができ、「子どもの権利」について言及されることが多くなりました。性被害を受けないことは「心身の権利」であり、子どもたちにその権利があるという教育を、できれば幼児期から、最低でも小学校に入ったらするべきです。
文部科学省などが進める「生命(いのち)の安全教育」は、被害者にならないためという視点が強調されていて、権利の視点は不十分です。
権利ですから、子どもたちには正確な知識を教わる権利があるとも言えますが、現状は妊娠の経過を扱わないなどとする学習指導要領のいわゆる「はどめ規定」があり、フタをされている。様々な場面で権利侵害はあってはならないということを、まず子どもたちに教える必要があります。
元ジャニーズJr.たちが法改正を訴える理由
昨年は、喜多川氏からの性被…