脳梗塞(こうそく)で右半身まひなどの後遺症のリハビリを兼ね、滋賀県長浜市内の男性が妻と自宅で赤飯を作り、近くの道の駅などで販売することになった。病院でのリハビリで思った以上に回復したためで、2人は「ぼちぼちやっていけたら」と話している。
長浜市内保町の山崎悦司さん(64)と淑子(としこ)さん(58)。悦司さんは大学卒業後に知的障害者施設に勤め、一昨年に施設長で定年退職した。デイサービス施設の運転手になったが、昨年6月、自宅で脳梗塞を発症した。
昼食後「おかしい」と話す悦司さんの顔面はゆがんでいるようで、淑子さんはすぐに脳外科のクリニックに連れて行った。血圧が高すぎるため、市内の総合病院を紹介されて検査したところ、血管が詰まり、脳に血液が行きづらくなっていることが分かった。その日のうちに入院した。
約1カ月の治療後、病状は落ち着いたものの、右半身が不自由になったほか、失語症などの高次脳機能障害が残った。リハビリのため、別の総合病院に転院。約5カ月間ほぼ毎日、杖で歩いたり右手を動かしたりするリハビリを続け、昨年末に退院して自宅に戻った。
当初、ベッドや車いすでの生活の可能性もあったが、回復は思った以上で、淑子さんは「これならつきっきりの介護は必要ないかも。2人でできることをしよう」と決意した。
市内の実家で長年、母(86)と大福の製造販売をしていた淑子さんは、これまでの経験を生かし、赤飯を販売することにした。
自転車置き場を改修して調理室を整備、蒸し器などをそろえた。今年4月からほぼ毎日、赤飯などを作った。悦司さんは左手を使い、パックを閉めてシールを貼る作業を担った。最初は15パックの作業を終えるのに約2時間かかっていたが、今では約30分で済むようになったという。
近所の人らに配ってアドバイスをもらい、味に自信がもてるまでになった。知人の紹介で、道の駅「湖北みずどりステーション」(湖北町今西)や農産物直売所の「郷生の里」(七条町)、「ゆめまる館」(高月町高月)で6月から販売できることになった。用意するのは赤飯、白むし(黒豆ごはん)、山菜おこわの3種類。とりあえず日替わりで納品するという。
悦司さんは「妻に感謝しています。できるだけ仕事をしたかったので」。淑子さんは「(リハビリもあるので)毎日できる仕事をしたかった。2人でできることをぼちぼちやっていきたい」と話した。(松浦和夫)