非常事態に、国が地方自治体に具体的な対応を指示できるようにする地方自治法改正案が国会で審議されている。国と自治体の対等な関係を損なうとの懸念もあるが、牧原出・東大先端科学技術研究センター教授は「非常時の政権の暴走に歯止めをかけるもの」と言う。コロナ禍を踏まえて法改正の必要性を語る牧原さんに、その意図を尋ねた。
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国の指示権拡大を答申した地方制度調査会(地制調、首相の諮問機関)の委員として議論に関わりました。2020年2月、安倍晋三首相(当時)が全国に一斉休校を要請しましたが、私は、国がああいう法的根拠のない指示を二度としてはいけないと問題意識を持っていました。
要請は木曜で、4日後の月曜から一斉休校する内容でしたが、科学的根拠も現場への配慮もなかった。当時の萩生田光一文部科学相が現場の懸念を伝えましたが、結果として全国で混乱が生じました。
大災害やパンデミックなど非常時に直面すると、人間の判断は危うくなる。非常時の政権は、世論やメディアから「もっと強く対応するべきだ」と迫られ、焦りがちです。世の中が冷静さを失うと、官民挙げて暴走する危ない状況が生まれます。現行制度では、個別法の想定を超える事態が起きた時、国の指示に関する規定がない。それが、制約のない非合理的な判断につながることが、コロナ禍で明らかになりました。
今回の地方自治法改正案の指…