やっぱり、子どもは2人くらいかな。
笛吹(うすい)和代さん(44)は結婚前から、特別な理由もなくそう思っていた。
当時は就職氷河期のただ中。臨床検査技師の資格を取り、検査・健診センターに製薬、化粧品会社と転職を繰り返した。理由の一つが、4人家族となった時に備え、妊娠・出産を経ても働き続けられる職場を求めてのことだった。
29歳の時、6歳上の夫と結婚した。なかなか妊娠に至らず、30代に入って不妊治療に踏み切った。残業が当たり前の環境の中、定時に退社しクリニックに駆け込む日々。通院には片道1時間以上かかる。定時で退社しても、受け付けに間に合うかどうか危うかった。退社後や休日に仕事の電話がかかってくることも珍しくなかった。
「次の繁忙期が来て迷惑をかける前に」。努力の末につかんだ職場だったが、出産適齢期を考え、やむなく退職を選んだ。
2012年、33歳で息子が生まれた。祝福に包まれたのもつかの間、親戚や周囲からかけられる言葉が、胸に引っかかるようになった。
「一人っ子はかわいそうだから」「年齢的にも、早く2人目を」。自分にまで聞こえるように、息子に語りかけてくる人もいた。「弟が良い? それとも妹?」
滋賀県で生まれ育った笛吹さんは、両親と弟との4人家族。それが家庭の「ロールモデル」だと信じて疑わなかった。近隣に住む親戚や友人も、「子どもは2人以上」という意識を持っているように感じられた。
「2学年差にしようかな?」。そんな言葉が、友人たちの会話からは聞こえてくる。
しかし笛吹さんにとって、第2子を持つという選択が「当然のもの」とは、もはや思えなくなっていた。
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