4月上旬、午前2時ごろのことだった。
フリスナー・ブレイスさん(32)は故国ハイチを脱出し、ドミニカ共和国西部のランチャデロで暮らしていた。トタン屋根の自宅の周囲で、物音が聞こえた。気配を察知して、すぐに目が覚めた。
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家のドアが乱暴にたたかれた。立っていたのはドミニカ政府の移民局職員2人だ。まだ3歳の長男を含め、家族4人が外に並ばされた。
身分証を見せるよう言われたため、ドミニカ政府発行の滞在許可証を提示した。だが、「偽物だ」などと難癖をつけられ、こう告げられた。
「ハイチに強制送還されたくなければ、金をよこせ」

反発する選択肢はなかった。3千ドミニカペソ(約8千円)を渡すと、職員はその場を去った。ブレイスさんは憤る。
治安の悪化で隣のドミニカ共和国に逃れた多くのハイチ人は、強制送還される可能性に日常的に直面しています。記事後半では、ドミニカとハイチの関係について掘り下げて伝えます。
「賄賂を渡さなければ必ず連…