二十数年前、前川知子さん(57)の母は大腸がんになり、「余命1年ほど」と医師に言われた。
痛みや不安を訴え、衰弱していく母にできたことは、なでさすることだった。手や足をさすると、母の眉間(みけん)のしわが少しゆるんだ。
ただ、今でも悔いていることがある。
母の足をマッサージしようとしたら、つかんだ自分の指の痕がしばらく残り、消えなかった。
2003年に母が亡くなった後、「もっとできたことがあったのでは」という思いが強くなった。
鍼灸(しんきゅう)やアロマテラピーを学んだ。終末期の患者に家族ができるケアを求めて試行錯誤。アロマテラピーだと、においがわからなくなってストレスを感じる患者もいる。タッチをメインにしよう、と約10年かけて優しいタッチの技術を開発した。
名付けて「マシュマロ・タッチ」。マシュマロを両手に挟んでつぶれないくらいの力加減で触れ、患者の不安やつらさをやわらげようとするリラックス法だ。
ぴったり、ゆっくり、五つの原則
肌に触れると、気持ちよさを…