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AIとロボットで科学のプロセスの自動化をめざしている理化学研究所の高橋恒一チームリーダー
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 単純な作業の繰り返しなのに、実験者によって差が出てしまうiPS細胞の培養。理化学研究所のグループは、「匠(たくみ)の技」をデータ化して、ロボットに再現させ、AIと組み合わせて、網膜の細胞に分化させる最適な方法を探った。「AIロボット駆動科学」を提唱する高橋恒一チームリーダーに聞いた。

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 ――「AIロボット駆動科学」とは。

 科学の方法論はこれまで第一の科学である観察・実験、第二の科学の理論、第三の科学のシミュレーション、そして第四の科学であるデータサイエンスへと発展してきました。これらは前のものが後のものに置き換えられるような関係ではなく、古い方法が重要性を保ったまま新しい方法が増えていくものです。

 たとえば、シミュレーション科学が発展しても理論は依然として重要です。第一の科学の観察・実験と第四のデータサイエンスは現象から帰納的に法則を発見するアプローチです。第二の理論と第三のシミュレーションはある仮定を出発点に法則を適用して演繹(えんえき)的に予測を行うものです。

 これらのアプローチを組み合わせて同時に使うことはあまりなかったのですが、AIとロボット実験の発展によって、これらの四つの方法論を統合し、より強力な研究サイクルを実現することが可能になりつつあります。これが、私が提唱する「AIロボット駆動科学」です。ある意味で、「第五の科学」の提案とも言えます。

 ――チャットGPTなど生成AIの基盤技術である大規模言語モデルも科学を変えるきっかけになりますか。

 はい。大規模言語モデルは世…

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