国家のあらゆる力を動員した近代の総力戦は、子どもたちをもいや応なしに巻き込む。今もガザでウクライナで子どもが戦争の犠牲になっている。教育学者の斉藤利彦さんは、日本の戦時下で子どもを対象とした戦争プロパガンダを研究する。あの時代を繰り返してはいけない、と心に刻みながら。
――なぜ、戦争と子どもというテーマ、とくに昭和の戦時下の教育に注目するのですか。
「そもそも戦争を引き起こすのは大人であって、言葉の本当の意味で子どもたちには何の責任もありません。このことが最も重要です。にもかかわらず、近代国家は、子どもたちを戦争に意図的に巻き込みます。父を、母を、家庭を奪われ、そして自らの命さえ奪われもしました」
「子どもが最も子どもらしくいられるのは家庭や学校ですが、それは許されず、軍事一色の生活になります。その典型が、昭和の戦時下です。当時の教育やプロパガンダの仕組みを解明することが、新たな悲劇を防ぐことになると思っているからです」
――戦時下の子どもは近い将来、兵士になる存在です。
「それだけではありません。戦争が激しくなると、少年飛行兵のように10代の子どもも駆り出されました。優秀だから早く軍隊に行くようにと教師に勧められることもありました」
「沖縄戦では陸軍中野学校出…