日本の産業の発展や形成に重要な役割を果たした遺産を研究する産業遺産学会の総会が8日、兵庫県姫路市内で開かれた。宍粟市の「波賀森林鉄道廃線跡等」と姫路市の「姫路モノレール関連資料」が新たに推薦産業遺産に認定され、関係者が認定の書類を受け取った。
推薦産業遺産は、国や自治体によって文化財指定を受けていない産業遺産について、学会が独自に選定している。認定によって世論に訴え、保存に役立ててもらう狙いがある。全国の会員から寄せられた候補の中から理事会が審査し、総会で発表する。
「波賀森林鉄道廃線跡等」は、宍粟市波賀町内の国有林でとれた木材を運ぶため、大正時代から建設された森林鉄道の遺構などを指す。1968年、半世紀に及ぶ歴史に幕が下ろされたが、波賀町の地元住民で作る「波賀元気づくりネットワーク協議会」が2016年から「復活」を期して、山奥に残る橋やトンネルといった遺構を調べたり、実際に使われたものとよく似た中古の機関車などを譲り受けたりしている点が評価された。
「姫路モノレール」は1966年に開業し、「姫路大博覧会」の開催に合わせて姫路駅と手柄山駅の間の約1.6キロを結んだ。利用客が伸びず、74年に運休、79年に廃止になった。だが、2011年に旧手柄山駅跡を改修した手柄山交流ステーションがオープン。当時の車両も展示され、鉄道ファンらに親しまれている。車両などの図面や行政書類が保管されている点も評価された。
同協議会の松本貞人会長(63)は「私たちの活動が正しかったことが認められたと思う。いま進めている機関車を走らせるコースの延長や駅舎づくりを通して、後世の人が歴史を学べるものにしたい」と話した。
子どもの頃に姫路モノレールに乗ったことがあるというステーション勤務の姫路市職員・石田博秀さん(59)は「モノレールの歴史や価値を再認識してもらうきっかけになると思うので、ありがたい」と語った。(雨宮徹)