アナザーノート 西部報道センター次長・土佐茂生
原発を使う限り、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を地下に閉じ込める最終処分場をどこかにつくる必要がある。昨年から、長崎県対馬市や佐賀県玄海町で誘致の動きが起きた。同じ頃、「核のごみ」をめぐって議会が分断する騒ぎが、宮崎県の町でも起きていた。
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木城(きじょう)町は宮崎県のほぼ中央にある人口約4500人の町だ。小丸川の流れに沿うように南北に広がる。1918年、白樺派を代表する作家武者小路実篤が提唱した理想郷「新しき村」が山あいに作られ、実篤自身も約7年暮らしたこともある。
この静かな町が昨年、「核のごみ」騒ぎに巻き込まれた。
1年前の話がなぜ?
発端は2023年6月12日。隣町の高鍋町議会で、共産党議員が「木城町に原発のごみが捨てられるのではないか、と心配の声が出ている」と質問した。
実は22年8月、木城町議会の産業文教委員会のメンバー5人が、「核のごみ」の最終処分事業に関し、青森県六ケ所村や北海道幌延町などを視察。交通費や宿泊費は、同事業に関わる原子力発電環境整備機構(NUMO)が負担していた。
5人は活性化策を考えるなかで、バイオマス事業や最終処分事業について勉強会を開き、その流れで視察に行った。視察の内容は議会に報告し、議会広報誌にも載せた。
メンバーの一人は隣町で質問が出たことに、「1年も前の話がなぜ今?」と戸惑った。当時、長崎県の対馬市議会で、最終処分場の誘致をめぐる議論が起き、全国的な話題になっていた。
隣町の質問は当然、木城町にも伝わった。
最終処分場に反対する久保富士子議員は、「町民に不安が広がっている。はっきりと町長に考えを言ってもらい、議事録に残したい」と思い、23年9月議会で質問しようと準備した。
ところが……。
久保氏は議会前の9月初め、議会の進行を決める議会運営委員会の後藤和実委員長らに呼び出される。「一般質問では、議員は進めたい政策について賛成の立場で聞くものだ」として、最終処分場の質問を取り下げるように言われた。
同月4日、甲斐政治(まさはる)議長の権限で、久保氏が質問を予定した3項目のうち最終処分場に関する質問は「不許可」とした。
感情的な「泥仕合」に
甲斐氏や後藤氏らは視察に行…