「現代アートの聖地」として知られる直島(香川県直島町)には、ガイドブックなどで紹介されない歴史がある。
島内の三菱マテリアル(旧三菱鉱業)直島製錬所で戦前、戦中、日本の植民地だった朝鮮の出身者が過酷な労務についたことだ。
高松市の浄土卓也さん(85)は、高松第一高校の世界史教諭だった1970~90年代にこうした歴史を調べ、「朝鮮人の強制連行と徴用 香川県・三菱直島製錬所と軍事施設」(社会評論社)にまとめた。
まもなく戦後79年となるのを前に、その痕跡は今どうなっているのか。6月1日、調査のために直島を再訪した浄土さんに同行した。
高松や宇野(岡山県)からのフェリーが発着し、外国人観光客があふれる宮浦(みやのうら)港から車で北へ5分。ゆるやかなカーブの先に、むき出しの岩肌と無機質な工場群が現れた。
大正期の創業で、100年を超える歴史を刻む直島製錬所だ。
浄土さんはここで朝鮮出身の若者らが戦時労務動員されていたことを裏づけた。その数は少なくとも620人にのぼる。
今回の目的の一つは、「それがなければ調査は進まなかった」という業務日誌を半世紀前に浄土さんに提供した三菱の元社員(故人)の遺族宅を訪ねることだった。
記事の後半では、三菱元社員の遺族から提供を受けた「朝鮮人労務者募集日誌」について紹介しています。
精錬所の労務課に所属してい…