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最高裁判決を受け、労災認定された労働者の代理人弁護士らは「勝訴」の旗を掲げた=2024年7月4日、東京都千代田区、沢路毅彦撮影
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 労働者の病気やけがを国が労災と認定した際、事業主が不服を申し立てられるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷(堺徹裁判長)は4日、「不服を申し立てられない」とする初めての判断を示した。「申し立てられる」とした二審・東京高裁判決を破棄し、国側の逆転勝訴が確定した。

  • 「労災保険の根幹揺るがした」裁判 事業主の不満の背景に保険料増

 裁判官5人全員一致の結論。事業主の不服申し立てが認められれば、一度認められた労災が後から取り消されるおそれが生じ、労働者の立場が不安定になる懸念があった。判決で、こうした事態は回避された形だ。

 労災保険は、労働者が業務や通勤でけがや病気をしたり死亡したりした場合、治療費などを補償する公的制度。「メリット制」と呼ばれる仕組みがあり、自らの会社で労災認定がされた労働者を雇用する事業主は、負担する保険料が増額される場合がある。ただ、労災認定に対し事業主は不服申し立てができないとされてきた。

 今回の訴訟では、一般財団法人「あんしん財団」(東京都)が国を相手に、職員の労災認定取り消しを請求。保険料増額という不利益を受ける事業主には「認定の是非を争う権利がある」と主張した。一審・東京地裁は訴えを退けたが、2022年の二審は一転して「権利がある」と判断した。

広がった懸念、国が運用変更

 第一小法廷は、労災保険には…

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