6月上旬、群馬県高崎市にある東京農業大学第二高校(通称・農二<のうに>)の体育館で、吹奏楽部がマーチングコンテストに向けた練習を行っていた。
演奏しながら行進やパフォーマンスを行うマーチングでは、メンバー一人ひとりの動きを記した「コンテ」を確認しながら練習を進めていく。
コンテには紙が使われることが多いが、農二では各自がタブレットを見ていた。学習用に学校で使っているものを活用している。
部員たちはいきなり楽器を演奏しなかった。ウッドブロックの音に合わせて「イチ、ニ、サン、シ!」と声に出しながら動き回り、コンテを頭と体にたたき込んでいた。
部員数は144人。熱気がこもる体育館の中で、部員たちの額や首筋に透き通った汗がにじんだ。
【連載】My吹部Seasons
吹奏楽作家のオザワ部長が各地の吹奏楽部を訪ねます。
- 【吹奏楽】ニュースはこちらから
♪
全国各地から多くの学校が参加する大規模な大会の頂点には、全日本吹奏楽連盟が主催する吹奏楽コンクールとマーチングコンテストの全国大会。日本マーチングバンド協会が主催するマーチングバンド全国大会がある。
農二はその3つすべてに参加し、優秀な成績を収めているまれな吹奏楽部だ。昨年度は西関東吹奏楽コンクールで金賞(3年連続)、全日本マーチングコンテストで金賞(4大会連続)だ。全部員で出場したマーチングバンド全国大会でも金賞で、グランプリ(総合第1位)だった神奈川県立湘南台高校に僅差(きんさ)の第2位だった。
規定課題があり、小道具使用禁止などのマーチングコンテストと、カラーガードの演技や手具の使用などに規定がないマーチングバンドの全国大会はどちらもマーチングの大会だが、演奏・演技の内容はまったく違う。コンクールも含めて、限られた時間の中で三つの大会の練習をし、予選や全国大会に出場するのは並大抵のことではない。
「コンクールとマーチングを両立できるわけがないとか、出る大会を絞って好成績を目指すべきだとか言われると、しゃくなんですよ。すべての大会で全国大会に出場し、全部金賞をとってやろう、というのが私の目標です」
24年前から顧問を務めている樋口一朗教諭は笑みを浮かべた。
「コンクールに挑むことはマ…