第106回全国高校野球選手権の地方大会の時期を迎えた。夏の高校野球といえば、一昔前は白いワイシャツやセーラー服姿の生徒が応援スタンドを埋め、声援を送る光景が一般的だった。だが、最近は白以外が目立つ。ポロシャツも少なくない。中学・高校の新たな夏の学校制服事情を探った。
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6月の栃木大会の組み合わせ抽選会では、参加56チームの主将らが次々にステージに上がり、自らが引いた番号札を読み上げた。服装をチェックすると、紺色や水色、ストライプのシャツなどが目に付いた。白いワイシャツ姿がまだ多いものの、それ以外の服が56人中15人程度に達した。
中学や高校の制服はどのように更新されるのか――。
同県壬生町の町立壬生中学で6月にあった新制服のお披露目会を取材した。見直しの検討が始まったのは2年前。生徒会のアンケートで、当時の制服の改善を求める声が上がったことがきっかけだった。生徒や保護者、地域住民、学校が知恵を出し合い、新しい制服への準備を進めた。
コンセプトは「多様性への配慮と選択の自由」。結果的にLGBTQに配慮したブレザースタイルになった。ジャケットは男女共通で、女子はスカートとスラックスの好きな方を選べる。
夏服には男女とも紺色のポロシャツを採用した。近年、猛暑の季節に体操着で登下校する生徒がいることを考慮した。素材は紫外線をカットするもので、汚れが目立ったり下着が透けたりすることがないよう紺色にした。
お披露目式はファッションショーのような形式だった。モデル役の生徒らが軽快な音楽に合わせて登場。ランウェーでポーズを決め、観客役の生徒らから歓声と拍手がわき起こった。
夏服のポロシャツのモデルを務めた生徒は「サラサラの素材。今の白いシャツよりも涼しくて、風通しもよい。汗が出ても吸い取ってくれると思う」と気に入った様子。制服の切り替えは来春の入学者からで、在校生からは「うらやましい」との声が上がった。増渕直樹校長は「今日も暑く、温暖化で気温の変動が激しい時代になった。それに合わせて完成させた制服。大切に着て学校生活を楽しんでほしい」と語った。
ポロシャツはいつから広まったのか。栃木大会の抽選会にポロシャツで参加した足利大付属高は、男子の白ワイシャツ、女子の白ブラウスに加えて、2021年度から男女とも「ネイビー色」のポロシャツを導入した。今は、男子の3分2ほどがポロシャツを着ているという。
「富士ヨット学生服」で知られる学校制服メーカー大手の明石スクールユニホームカンパニー(岡山県)によると、同社がアイロンがけのいらないニット素材のシャツの製造を始めたのが20年ほど前。学校オリジナルの別注品としてスタートしたという。
ただ、当初はニットへの抵抗が根強く、理解を得られない学校が多かった。徐々に、保護者が利便性を求めるようになり、10年ぐらい前から広く認知され始め、年々、販売数が増えていった。
現在は、制服を決める「検討委員会」などから「シャツはノーアイロンのものがいい」といった要望が出てくるという。
ポロシャツの導入は、LGBTQへの配慮などで、「学ラン」「セーラー服」から男女とも同じブレザーに変わる全国的な動きが影響した。変更のタイミングで、夏服も見直すことが多く、そこで選ばれるのだという。
ポロシャツについて「制服としてはラフ過ぎる」という意見は出ないのかとたずねると、同社の担当者は「大人の世界がクールビズになっているのに、子どもをいつまでも苦しい環境にいさせるのは時代錯誤」ときっぱり。「体調管理のための制服選びに変わっているのが現状」と解説した。(津布楽洋一)