Smiley face
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VTuberの「元祖」と言われるキズナアイさん。2016年末から活動を始めた。22年から活動を休止している=ユーチューブから
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 若年層を中心にその存在感を高めるVTuber(バーチャルユーチューバー)。実在の人物ともアニメのキャラとも違うその存在の不思議さについて、真正面から学術的に考察した「VTuberの哲学」(春秋社)が出版された。著者の山野弘樹さん(29)は、バーチャルな存在と人間が関係をつくる出発点になることを展望する。

 ユーチューバーといえば動画配信によって生計を立てる人たちだが、中でもVチューバーは、主にアニメのようなキャラクター画像を自身の姿として配信する人たちを指す。配信者は、声を吹き込んだり、キャラと自身の動きが連動するモーションキャプチャーを使って踊ったりして、ファンを楽しませる。

 東京大学大学院博士課程に在籍する山野さんは、主にフランスの哲学者ポール・リクールを研究。博士論文を執筆中の気鋭の研究者でありつつ、Vチューバーの熱心なリスナー(鑑賞者)という顔も持つ。本の中でも個別の配信の事例に即した考察が目立つ。「リスナーの直観を一部でも客観的に体系化したかった。多くのリスナーが明確に言語化していなかったことを哲学的に分析した」と語る。

 山野さんが着目したVチューバーの独自性とはなにか。たとえばユーチューバーは実在の姿をさらしながら配信し、現実世界に根ざした存在であることは明白だ。一方で、アニメやドラマのキャラクターはフィクションの世界のものとして鑑賞者に楽しまれている。

 ところがVチューバーは、見た目は明らかにリアルではないが、実在する配信者の言動に根ざしており単にフィクションと整理することもできない。山野さんの研究はこの不思議さに着目した。

 Vチューバーはいったいどん…

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