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 ドラマ「3年B組金八先生」(TBS系)の脚本で知られる小山内美江子さんが5月に亡くなりました。学園ドラマの金字塔ともいわれる「金八先生」は、10代の妊娠や校内暴力、不良生徒を排除しようとする「腐ったミカンの方程式」など、教育問題を取り上げて共感を呼び、教育界に大きな影響を与えました。小山内さんと交流があり、「リアル金八」と呼ばれていた教育評論家の尾木直樹さんに当時の教育環境やドラマの影響などについて話を聞きました。

尾木直樹さん

おぎ・なおき 教育評論家、法政大学名誉教授。1947年、滋賀県生まれ。早稲田大学を卒業後、中学、高校の教師を22年間務めた後、法政大学教授など22年間大学教育に携わる。「尾木ママ」の愛称でバラエティーから報道まで幅広いテレビ番組にも出演。子どもと教育、いじめ問題に関する著書も多い。

 ――武田鉄矢さん演じる「金八先生」のモチーフが尾木さんという「うわさ」があります。本当なのでしょうか。

 僕は1980年代に東京都内で公立中学校の教員をしていて、当時は保護者から「リアル金八」と呼ばれていました。

 非行に走っていた子の気持ちにならなきゃと思ってパンチパーマをかけたり、「真っ白な世界を見たら、立ち直れる」と考えて生徒を群馬の谷川岳にスキーに連れて行ったりしていましたね。

 こうした型にはまらず、徹底的に生徒に寄り添う教育実践の手法や発想が、ほとんど金八先生と同じ。ただ、ドラマの影響を受けたわけではないので、偶然の一致でしょう。

 小山内さんとは、22年間の教員生活にピリオドを打ち、教育評論家になった90年代以降に交流が始まりました。取材に来られたり、雑誌の企画で対談をしたり。私がテレビに出るようになってからは、武田鉄矢さんと一緒に「金八先生」を振り返ることもありました。だから、そんなうわさが広まったのかもしれません。

 ――小山内さんと話した中で印象的だったことは。

 一つは「金八先生」が生まれたきっかけです。

 ドラマの放送が始まる前の年(78年)、テレビ局から小山内さんは「どんなテーマでもいいので、脚本を書いてほしい」と言われたそうなんです。

 当時、中学を卒業したばかりの息子さんが小山内さんにはいた。そして、あの時代は中学生の万引きや家出などが新聞紙上をにぎわせていました。そこで、親の視点で中学生の現実を描こうと思ったことが、出発点だったそう。「金八先生」はてっきり、教師をテーマにしたと思っていたので、親の視点から、とは驚きました。

 ――尾木さんは、「金八先生」をどのように見ていましたか。

 15歳の母や校内暴力、性同…

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