米共和党のトランプ前大統領(78)は、党全国大会の最終日18日の演説で、大統領候補としての指名を正式に受諾すると宣言した。全米が衝撃に震えた銃撃事件からわずか5日後。トランプ氏が演出しようとしたのは、過激な発言を控え、すべての米国民に「団結」を呼びかける指導者としてのイメージだった。
「暗殺者の銃弾は、私の命をあと1/4インチ(約6ミリメートル)というところまで追い詰めた」
指名を受けたトランプ氏は、静かな口調で語り始めた。「大きな音が聞こえ、右耳に何かが強く当たった。右手を当てると、血に染まった。攻撃を受けていると気付き、すぐに身をかがめた」
「全能の神のご加護」
この日に登壇できたこと自体が「全能の神のご加護」のおかげだと神妙に語り、事件で命を落とした消防士に黙禱(もくとう)を捧げた。会場は静まりかえり、時折、拍手で応えた。
演説中には、世界に配信されて有名になったAP通信の報道写真も大画面に映し出された。銃撃を受けた直後のトランプ氏が立ち上がり、聴衆に拳を突き上げ、背後には星条旗がはためく。会場からは「ファイト! ファイト!」と大合唱が起きた。
関係者によると、事件を受けてトランプ氏は自ら演説の原稿を全面的に書き換えたという。
選挙戦の序盤、トランプ氏が掲げたキーワードは「報復」だった。民主党との「最終決戦」という言葉も好んで用いた。国民をインフレで苦しめ、トランプ氏を刑事訴追したのはすべてバイデン民主党政権の所業だ――。そんなふうに決めつけ、仕返しを呼びかける扇動的な論法だ。
■強調した「団結」…