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ロシア軍との最も激しい戦闘が行われたウクライナ東部ドネツク州チャシウ・ヤールで2024年7月3日に撮影された空撮画像。ウクライナ軍提供=AP
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記者解説 論説委員・駒木明義

 ロシアのプーチン大統領(71)は5月に5期目に入った。今後6年間の任期中にウクライナでの戦争をどう収拾しようとしているのか。この疑問に答える重要な発言が、自身の口から飛び出した。

 6月14日、外務省幹部らを集めた会合で、停戦交渉を始めるための条件を明らかにしたのだ。これまでウクライナの「非ナチ化」といった目的を語ることはあったが、具体的な要求を明かすのはこれが初めてだ。

 「条件は極めて単純だ」とプーチン氏は語ったうえで、以下の2点をウクライナ側に求めた。ウクライナ東部のドネツク、ルハンスク、中南部のザポリージャ、南部ヘルソンの4州から軍を完全撤退させること。北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念すること。

 「ウクライナがこうした決定を発表し、実際に軍の撤退を始めたら、その瞬間にわが方は戦闘停止と交渉開始を命令するだろう」とプーチン氏は語った。

 乱暴極まる要求というしかない。これら4州についてロシアは一昨年9月、一方的に編入を発表し、憲法にも自国領土として書き込んでしまった。これ自体が許されざる侵略行為だが、問題はそれだけではない。

ポイント

 プーチン大統領は停戦交渉開始の条件に、ウクライナ4州の無条件割譲を要求した。米大統領選でトランプ氏が当選しても、即時停戦の求めには応じない可能性が大きい。終わりの見えない我慢を国民に強いてでも戦争を続ける決意が、演説から感じられる。

 4州のうち実際にほぼ全域を…

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