トランプ前米大統領が銃撃された事件から1週間になります。事件直後、星条旗を背景に血を流しながら拳を突き上げたトランプ氏の姿を捉えた米AP通信の写真が世界で繰り返し使われ、事件を象徴する1枚になりつつあります。メディアが世論に与える影響を研究する上智大学の佐藤卓己教授(メディア論)に、その背景や報道写真がプロパガンダに利用される可能性などについて聞きました。また朝日新聞映像報道部の矢木隆晴デスクが、報道写真記者の視点から、この切り取られた「瞬間」をどう見たかを解説しました。
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上智大学の佐藤卓己教授
私がトランプ氏の写真を見たときに思い出したのは「硫黄島の星条旗」と呼ばれる、ピュリツァー賞を受賞した有名な報道写真だ。第2次世界大戦末期の硫黄島で、米兵6人が激戦地・摺鉢山の山頂に国旗を掲げる姿を捉えたAP通信の写真で、米国人にとっては流血を伴う「勝利」を象徴する印象深いもの。切手に使われたり、米国の「海兵隊戦争記念碑」のモデルになったりしてきた。
複数のシークレットサービスらに囲まれたトランプ氏の上に星条旗がはためく様子は、まさに「硫黄島の星条旗」の構図と重なる。2枚の写真を頭の中で重ね合わせて、トランプ氏に「流血の勝利」をイメージした米国人が少なくなかったであろうことは想像に難くない。
共和党のトランプ支持者らが…