電気自動車(EV)にも戦闘機にも欠かせない重要鉱物をめぐり、米国が「脱中国」にかじを切っている。最大の対立相手に基幹物資を頼ることへの危機感からで、自国生産を急ぐとともに、中国産には高関税をかける。ただ、性急な転換は、経済を不安定にしかねないリスクもはらむ。
カジノの街ラスベガスから車で1時間。カリフォルニア州南部の砂漠に、レアアース(希土類)を米国で唯一産出するマウンテンパス鉱山がある。採掘場は深さ180メートルまで掘り下げられ、切り出した鉱石を満載したコマツのダンプトラックが行き交う。
2017年から鉱山を所有・運営するMPマテリアルズのマット・スラスチャー上級副社長が、記者の手にクリーム色のさらさらした粉を載せた。レアアース鉱石を粉々になるまで砕いたものだ。
「これを『ロースト(焙焼(ばいしょう))』するんだ」
採掘場の近くでは、MP社が新たに導入した筒状の電気ヒーターがゆっくりと回転する。内部でレアアース粉末を高温処理したうえで、そこから高純度のレアアースを抽出する工程に回す。
MP社が注力するのが、レアアースの一種の「ネオジム」だ。抽出されたネオジムは年内に稼働を始めるテキサス州の新工場に運ばれ、そこで「ネオジム磁石」に加工される。工業製品に幅広く使われ、EVや風力発電など、脱炭素に必要な製品に不可欠なことから注目が集まる。
米政府も自国産レアアースに補助
MP社は、この磁石を米国で…