「災害級」「命にかかわる」――。そんな言葉が決して大げさではなくなった、夏の暑さ。朝の情報番組で天気予報を伝える気象予報士の正木明さん(63)は、地球温暖化や異常気象に危機感を募らせ、手弁当で関西の小中学校で講演を続けています。日々のテレビ出演で伝えきれない、その思いとは。
――「おはよう朝日です」(ABCテレビ)に長く出演しています。そもそもなぜ、気象を仕事に?
出演35年目に入りました。神奈川県鎌倉市で育ちました。大学卒業後に化学メーカーに就職したものの、配属先の業務が軍需産業につながる面があり、受け止めきれず、すぐにやめてしまいました。
サーフィン好きで波について知りたい思いもあり、気象情報会社に就職しました。天気予報の原稿を書いたり、ラジオで台風情報を話したりしていたところ、上司に「おは朝」の面接を受けるように言われたんです。
当時の「おは朝」の司会は宮根誠司さん。私は関西弁を話せないし、面白いことも言えない。でも、なぜか合格し、視聴者にも受け入れてもらえた。やりがいを感じるなか、気象情報会社に身を置く限りはいずれ東京に戻る可能性が高く、退社してフリーになりました。気づけばどの出演者・制作者よりも古株になりました。正直、今でも向いているとは思わないんです。よくかみますし。
ずっと悶々としてきた
――地球温暖化への問題意識はいつごろから。
1997年、先進国に温室効果ガス排出削減を義務づけた京都議定書が採択された頃からです。欧州では選挙の争点になるのに、日本では話題にもならない。メディアが発信しないからです。番組内でも気候変動の話題を入れられないか、スタッフに相談してきましたが、「大事なことはわかるけど」という反応。視聴率が取れない、スポンサーがつかない、といったことなのでしょう。
日本は温暖化対策に前向きじゃないとして、環境NGOから毎年のように「化石賞」に選ばれている。「メディアは真実を伝えない」と批判もされる。自分は伝える立場にいるのに伝えられていない。ずっと悶々(もんもん)としてきました。
――そうしたなかで、一昨年…