0歳児にも選挙権を――。日本維新の会共同代表の発言が4月、物議を醸した。憲法の原則に反するとして批判が多いが、実は若年層の利益を政治に反映させるために以前からあるアイデアでもある。選挙による民意の「世代間格差」をどう考えればいいのだろうか。
「ドメイン投票」とは
「子どもや孫の世代は圧倒的に政治的に影響力がない」。維新共同代表の吉村洋文・大阪府知事は今春、こう述べて0歳児も含めた未成年者への選挙権付与を主張した。府内の12市町村が「消滅可能性自治体」とされたことを受けた発言。未成年者は親が子の分も投票するとして、子が3人いる自身は「4票の影響力がある」と述べた。
急速な少子高齢化により、現在の制度では必然的に若年層よりも高齢者の声が通りやすくなる。国立国会図書館の調査によると、2017年衆院選の有権者数は「65~69歳」の世代が「20~24歳」の1・66倍。投票率も高齢者の方が高いことを勘案すると、実際の投票者数は高齢世代が若年層の3・97倍と推計できるという。こうしたことから政治家が高齢者の利益を重んじる「シルバーデモクラシー」の弊害も指摘されている。
改善策の一つとして、子どもに選挙権を与えて親が投票を代行するのが「ドメイン投票」と呼ばれる制度だ。米国の人口学者ポール・ドメイン氏が1980年代に提唱。日本へも2010年ごろに紹介され、当時の政府内外で議論された。
維新は以前から導入検討を政策提言に掲げており、今年5月には参院で維新の議員が岸田文雄首相に検討を迫った。選挙コンサルタントの大浜崎卓真さんは「支持層である子育て世代にアピールする意図があるのでは。維新らしい思い切った政策だが実現には課題が多い」とみる。
「憲法の解釈の限界を超えている」
立命館大の倉田玲教授(憲法学)はドメイン投票について「明確に違憲だ。現行の憲法が想定する民主主義のあり方を抜本的に変えることになる」と指摘する。
代理投票を認めて一人ひとり…