連載「A-stories 8がけ社会とまちの未来」では、神戸市外国語大学(神戸市西区)で人口減少問題などを研究する中嶋圭介准教授のゼミと連携しました。連載で取り上げた各テーマをゼミ所属の3、4年生も議論し、「8がけ社会」の対応策や解決策を考えました。(議論の過程や7月16日の中嶋ゼミでの発表から記者がまとめました)
テーマ なぜ神戸は「負け」るのか
「就活を終えたが、神戸でいいなと思う企業は一つもなかった」
「周囲で神戸で働きたいと思って就活している人はゼロだった」
就活と向き合う大学4年生と翌年に控える3年生6人で始めた議論で最初に一致したのは、就職をめぐる神戸への厳しい視線だった。
神戸市では、進学で集まる18~23歳の大学生世代は転入超過だが、就職・子育て世代の24~38歳は転出超過だ。
なぜ若者の流出が続くのか――。間もなく神戸に残るか出るかを決める学生の目線から、その背景と改善策を探った。
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「いまの大学生には取っつきにくい」
1960年代以降、神戸市は郊外の山を削り、全国有数の新興住宅街を開発した。だが、市外へのアクセスの悪さがネックとなり、昨今は若者や子育て世帯から選ばれず、人口減を加速させる要因となっている。そんな歴史的経緯について、議論をリードした4年生の竹村雅哉さんは「高度経済成長期の副作用」と指摘した。
戦後、神戸港を中心に発達してきた重化学工業について、神戸出身で4年生の松井日菜詩さんには「いまの大学生からすると、取っつきにくく関心を持ちにくい業種」と映る。
そのうえ神戸港の国際的な存在感は年々下がり、代わりとなるITなどの新産業も根付いていない。2021年の中小企業庁の統計では、神戸市にある大企業の数は、大阪市の6分の1に満たない125社にとどまることも分かった。
企業数では大阪市に遠く及ばず、ベッドタウンとしても弱い。関西圏の拠点都市として「どっちつかず」の神戸市の現状が、若者を引きつけられない一因だった。3年生の中田怜さんは、この先も神戸に住み続けることを視野に入れるが、「どんな人に住んで欲しいのか、市のターゲット層が見えない」。
若者を引きつけるのはワクワク感
「8がけ社会」に向かう未来…