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朝日新聞の取材に応じる久元喜造・神戸市長=2024年6月21日午前9時54分、神戸市役所、杉山あかり撮影
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A-stories 8がけ社会とまちの未来(5)

 人口減少が進む2040年。高齢化で社会の支え手はますます必要になるのに、現役世代は2割減る「8がけ社会」がやってきます。大都市の中で顕著な人口減に直面する神戸は、縮小する将来を見据えた策を打つ一方、激しい人口争奪戦の最中にあります。葛藤する神戸を通じて、持続可能なまちの未来を考えます。

 現役世代が2割減る2040年の「8がけ社会」に向けて、都市の未来をどう描くのか。まちの活力を維持しようと、若者や子育て世代の争奪戦が都市間で強まる中、あえて「タワマン規制」を打ち出す神戸市の久元喜造市長に真意を聞いた。

 ――市長に就任した13年からこの間、人口減少や東京一極集中が続いてきました。

 人口が増え続ける時代の価値観を引きずり、政策を漫然と続けてはいけない。人口減に拍車がかかるであろう事実を真正面から受け止め、どうしたら暮らしやすい大都市を作っていけるのか、常に考えてきました。

 ――そうした市政運営で重視してきたポイントは?

 キーワードは「持続可能性」です。死亡が出生を上回る自然減は韓国が顕著ですが、中国も欧米もそういう傾向が見られる。グローバル社会で共通した問題であり、国の政策と連動しながら出生率を増やす取り組みが重要です。

 一方で、人の出入りで決まる社会増減では、自治体間で「人口の奪い合い」が起き、この10年間でかなり弊害が出ています。都市財政の持続可能性を損ない、地方自治や民主主義に対する、長い意味で信頼を損なう事態が生じている。どこの自治体も、そういう発想からできるだけ距離を取るべきではないかと思います。

やりたくなかった、大阪府への対抗策

 ――しかし、神戸市も大阪府の高校授業料の「完全無償化」を受け、市内の高校生の通学費補助を始めます。

 こんなことは、やりたくなかったんです。本当は兵庫県が考えるべきことで、県にお願いしたら「財政的に無理」と言われたので、市としてやれる範囲ギリギリまでやりました。

 大阪府が高校無償化を始めれば、他の自治体に与える影響は深刻です。吉村洋文府知事は「府民のために」と考えたのでしょうが、周辺自治体に「副作用」が出る。子育て世代がこれだけ経済的負担に敏感な時に、大阪では年収910万円以上の世帯でも高校授業料の負担がなくなる。この世帯が兵庫県に住めば、高校3年間で130万~180万円程度の授業料負担があります。

 ――子育て世代には大きな差です。

 神戸市としては、近隣の自治体と人口の奪い合いをするのではなく、同じ圏域であれば連携協力していきたい。しかし、教育費の差で今後、マイホームを買う時に大阪を選ぶ世帯が増えれば、神戸の高校の志願者が減ります。そうすると教育水準が下がり、さらに人口が流出する「負のスパイラル」に陥る可能性が非常に高い。これを何としても食い止めないといけないので、残念ながら人口の争奪戦に乗らざるを得ないところもある。

タワマン規制、その真意は?

 ――都市としての「持続可能性」を考え、神戸市が取り組むのがタワマン規制です。その狙いは?

 タワマンに象徴される、新築住宅着工戸数を競い合う価値観は、地域間、自治体間で人口を奪い合うことに直結します。人口減少時代にふさわしくなく、大阪がどんどんタワマンを建てるから神戸市も建てた方がいいという発想には立ちません。

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