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白寿の湯で提供される冷やしひつまぶし御膳=温泉道場提供

 海なし県の埼玉でうまれたサバとウナギがタッグ――。サバの陸上養殖で知られる埼玉県神川町の温泉施設「おふろcafe白寿の湯」が、隣町の上里町の養殖場から初出荷されるウナギを使った料理を考案し、今夏2回目の土用の丑(うし)の日にあたる8月5日に合わせて入浴客に提供する。養殖事業に携わる両者が力を合わせた商品だ。

 新メニューは「上里育ち 陸上養殖うなぎの冷やしひつまぶし御膳」(税込み2980円)。すっきりとした脂と上品なうまみを生かした一品になっているという。

 コラボ企画を提案したのは、白寿の湯を運営する温泉道場(ときがわ町)の松山浩隆さん(48)。昨年、上里町にウナギの養殖場をつくった「平沼水産」の平沼貴之社長(50)とは2年ほど前、白寿の湯の支配人だったときに知り合った。

 伝統的な食文化を次代につなぐためにも埼玉産ウナギを根付かせたい。自動車販売業から転身した平沼さんの思いを聞き、うれしくなったことを覚えているという。

 ウナギ養殖は今年1月、稚魚を屋内水槽に放してスタートしたが、設備の不具合もあって生育が遅れ、今夏の出荷は計画の3割ほどにとどまる見込みだ。

 サバ養殖を通して生き物を育てる難しさを知る松山さんは、平沼さんに持ちかけた。「今年の成果を形にしましょう。お客さまの意見も聞けます。今後に生かせるのではないでしょうか」

 平沼さんは白寿の湯に納めるウナギの品質管理・向上に努めている。陸上養殖ウナギにあるとされる独特の「におい」を消すため、真水の中で泳がせるなどしている。

 においのことは、わざわざ養殖場まで足を運んでくれた浦和のウナギ店主からの指摘だった。県や民間の研究施設も様々な助言をくれる。定期的に注文してくれる洋食店、特産のナシをエサにする試みに協力してくれる農家など、上里町内にも力を貸してくれる人が増えてきたそうだ。

 松山さんと平沼さんは初対面のときに「機会があれば何か一緒にやりましょう」と言葉を交わした。思いのほか早い実現に苦笑する平沼さん。「順調にいかなかったからこそ、多くの人とつながることができました。今度はサバとウナギを使ったメニューを提案したいですね」

 冷やしひつまぶし御膳の提供は8月3~5日、白寿の湯の「食事処 俵や」で。入館料が必要。問い合わせは白寿の湯(0274・52・3771)へ。(猪瀬明博)

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