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台風5号の進路予想図。一時的に弱まっていた太平洋高気圧がしだいに張り出したことで東北地方に上陸する経路(青線部分)をたどった=気象庁ウェブサイトから

 12日午前8時半ごろ、台風5号が岩手県大船渡市付近に上陸した。東北の太平洋側から台風が上陸するのは気象庁が観測を始めた1951年以降、今回で3例目と少ない。不慣れな地域をゆっくりしたスピードで進むことで、影響が長引く可能性がある。

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 気象庁は、台風の中心が北海道、本州、四国、九州のいずれかの海岸に達した場合を「上陸」と定義している。沖縄や小さい島を短時間で横切る場合は上陸ではなく、「通過」と表現される。

 気象庁によると、これまで日本列島に上陸した213の台風のうち、東北の太平洋側から上陸したのは、2016年8月に岩手県から上陸して27人の死者・行方不明者を出した「平成28年台風10号」と、21年7月に宮城県から上陸して1人の死者が出た「令和3年台風第8号」の2例のみとなっている。

高気圧に左右される進路

 東北への台風の上陸がほかの地域に比べて少ないのは、台風シーズンの夏場に列島に張り出す太平洋高気圧の存在が一因になっている。台風は通常、日本の南東にある太平洋高気圧の縁を流れる風によって西回りに北上したのち、偏西風に乗って東へ進むため、東北地方より先に西日本側から上陸するケースが多い。東北を通るころには、勢力が弱まって温帯低気圧になっている場合もある。

 しかし、今回の台風5号は、太平洋高気圧が一時的に弱まっていたことから日本の東の海上を北上した。当初は、上陸せずにそのまま日本の北東の海へ流れる進路が見込まれていた。それが、しだいに北海道付近で太平洋高気圧の張り出しが強まり、偏西風が平年より北寄りを流れていることも影響し、列島へ近づく進路に変わっていったという。

 台風5号は過去の台風に比べると極めて強いわけではないが、台風に慣れていない地域を時速15~20キロのゆっくりとした速度で通過する見込み。気象庁は「高い危機感を持っている」として、土砂災害や河川の氾濫(はんらん)、低い土地の浸水に厳重な警戒を呼び掛けている。(大山稜)

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